小説

ハウリング

目を覚ますと熱が出ていた。口の中の水分が眠っている間にまるごと蒸発してしまったような、そんな熱と渇きだった。ここ数年来病気をしてこなかった娘の異常事態を予測しろと言うほうが無理な話かもしれないけれど(わたしは家族が代わりばんこにインフルエ…

歯医者

応募する歯科口腔外科医は、前歯と歯茎の境目がアーチ状に黒ずんでいた。助手の女が、ゴム製のチューブで先端が覆われた細長い金属製の器具を私の口にさし入れ、分泌され続ける唾液を絶え間なく取り除いていった。ぬるぬるした頬の裏側に吸い付くと、女は真…